どこか輝いていて、青春味があって。初めてdoes it floatのライブをみたとき私はそう思った。その日のライブはいくつものバンドが出演していたが、彼らのその演奏には他のバンドにはない“エモさ”があった。それから私は彼らのライブを忘れることができなかった。一体、このバンドの“エモさ”はどこからきているのだろうか。今年リリースされる予定の新譜の話などをふまえながら、彼らにインタビューをした。
interview by 北村奈都樹
does it float are;
松本芳裕
萩原豪啓
松村貴志
持増寿邦
does it floatが結成されたのは何がきっかけだったのでしょうか?
松本芳裕(以下松本):俺が大学に入って、クラスに友達ができなかったのでサークルにでも入らないと、俺の4年間が真っ暗なものになってしまうと思って、軽音サークルを探して…。いろんな軽音サークルがあるなかでビートルズが好きだったから、ビートルズ研究会に入った。そしたら、先輩に萩原くん、まっつん(松村)がいて。そのときはモティ(持増) はまだいなかったんだけど。3人でハイスタのコピーバンドやったらすごい楽しくて、その延長でバンドやろうってなって。
萩原豪啓(以下萩原):それで肉まん(松本)の高校の友達をベースに入れて始めたのがきっかけ。2003年くらい。
では、みなさんの音楽の根本になっているバンドはHi-Standardになるんですか?
松本:元になってるというより、俺らの世代はみんな好きで、コピーしたらすごい楽しかった。
萩原:練習しなくてもできたもんね。(笑)
does it floatはThe Get Up Kidsに影響を受けているという話を聞いたことがあるのですが、曲作りをされている松村さんと松本さんはThe Get Up Kidsを意識されている部分は何かありますか?
松村貴志(以下松村):うん、ゲットアップキッズは大好き。
萩原:肉まんはゲットアップキッズとウィーザーが青春だよね。
松本:2人が好きなバンドとして共通していえるのはゲットアップキッズだけど、ゲットアップキッズをそのままやるんじゃなくて…。とりあえずメンバー全員が、「とてもいい曲だね」って思える曲を作れたらいいなというか。その裏にそういうゲットアップキッズとかの要素はあるかもしれない。でも、○○みたいなバンドになりたいっていうのはないよ。
萩原:俺なんかは全然音楽知らないしね。
松本:うん。ただ、そういう、あんまりいろんな音楽を聞いてない人の意見はすごく信頼できるというか…。
萩原:だろ? (笑) 重要な役割を担ってるんだよ! (笑)
一同:(笑)
そうなんですね。でも、みんなが納得する曲を作るのって大変ですよね。
松村:曲作りは過酷なもので…。みんなが納得しないとOKがでないので…。家とかでは作らないでスタジオに入って曲を作るんだけど。今ある曲をちょっと練習してから、メンバーからどうぞって言われて作曲タイムが始まるの。こんなのどう?って、出してもすぐ却下されたり(笑)
そのあと歌詞を作るんですか?
松村:俺はなんにも伝えたいことがないので…。(笑) 彼(松本)に書いてもらってる。
一同:(笑)
私は「Sing Yesterday」がとても好きなのですが、So many peopleって出だしがすごい印象的で…。
一同:爆笑
萩原:それみんなに言われるんだよ!(笑)あの出だしみんなマネすんの!!
松本:みんなばかにするんだけど、適当に書いてるんじゃなくて…。
萩原:それはみんなわかってるよ。(笑)
松本:でも、なんかその…共感みたいのは一切いらないし、嫌なんだ。
萩原:暗いんだ、この人。歌詞も女々しいもんね。「So many people」だって、結局はひとりなんだ、っていう歌だもんね。
持増寿邦(以下持増):てか、「So many people」って曲じゃねえし。(笑)
一同:(笑)。
歌詞を作るにあたって、そういった部分はWeezerに影響受けていたりしますか?
萩原:単純に暗いだけだよ。(笑) 強烈なメッセージ性とかは特にないよね。
松本:歌詞について言えば、ポリティカルな歌を歌ったりする人もいれば、これに怒ってるんだ!っていう歌を歌う人もいて…。そういうメッセージ性のあるものは、それはそれですごく良いと思うんだけど、俺がそれやると嘘になっちゃうからね。
does it floatの曲はメロディックと言っても、他のバンドにはない「エモさ」がありますよね。 そんなところが私はとても好きなのですが、これまで私がメロディックのバンドをインタビューしていると、どのバンドも、Against Me! に影響を受けているとおっしゃっていました。does it floatもAgainst Me! のようなメロディック色の強いバンドに影響を受けていたりしますか?
松本: たぶん俺以外の三人はAgainst Me! 聴いたことないよ。
そうなんですねえ! あまりメロディックのバンドを聴かれないんですか?
萩原:あんまり聴かないね。
持増:あんまり聴かない…。
では、自然な流れで今のようなメロディックな曲ができていったんですね。
松本: 俺は大学生のころ、Snuffy SmileのバンドとかFour Tomorrowとか,
すごいライブを観に行ってて、好きだったんだけど…。それをこのバンドに取り入れたいとかはなくて。ただ単純にまっつん(松村)の書く曲が俺は好きなの。本当にどのバンドに影響受けてるとかっていうのはないよね。
萩原:こういう感じの曲みたいなのができたらいいね、っていう漠然としたものはあるけどね。
松本さんは、The Get Up Kidsの1stアルバムが好きだ、と杢田さん(neko!) から聞いたことがあって…。
松本:そう。高校生のときにロボットのアルバム(2ndアルバム)を買いにいって、家帰って聴いたら「うわあああ、とんでもないもんがでた!」と思って(笑)そのへんから90年代のエモと呼ばれるバンドを聴くようになって。
でも、1stアルバムのほうがすきなんですか?
松本:(The Get Up Kidsの)1stは結局、2ndよりも後に聴いたんだけど、1stのちょっとしょぼい音が俺はすげー好きで。あの頃ってライブのテンションもすごいんだよね。目も悪くないのに黒縁メガネほしいかもしれないと思ったり。(笑) ただ、10代だったこともあってか、そういうバンドに憧れて、伊達で黒縁メガネをするのは恥ずかしいことだと思ってて。
(松村、黒縁メガネをはずす。)
松本:いや、お前は目が悪いからいいんだよ! 俺は目いいんだもん。
(笑)。 持増さんは最初にdoes it floatの曲を聴いたときどうでしたか?
持増:頑張ってるなと思いました。いやー、けど好きですよ。結構観に行ってたので。
萩原:そう、最初お客の立場だったの。
そうなんですね!
松本:ライブに毎回来てくれて。モティは同級生で、バイトも一緒にやってたね。
持増:クリスマスイブも一緒に過ごしたし。(笑)
萩原:(持増は)サークルに遅れて入ってきたんだよね。
持増: そう。(松本は) 同級生で、2人は先輩で、当時は萩原さん、松村さんって呼んでたんですけどね。それがいつの間にかないがしろに…。(笑)
持増さんは松村さんと萩原さんの後輩にあたるわけじゃないですか。なぜ、後輩である持増さんを誘うことにしたのでしょうか?
萩原:最初は「歌えるベース」がいいって話になってたんだけど。
松村:やっぱり、気の合う人がいいねって話になって、モティに白羽の矢が立って。
萩原:元はギターなんだけどね。
持増:元々ベース引いたことなくて。
そうだったんですね! (笑) あと、ライブを見ていて、ベースの立ち位置が気になっていて…。ベースが真ん中になったのはどんなきっかけがあったのでしょうか?
萩原:立ち位置は結構変遷があって、最初は肉まんが真ん中だったときもあったなあ。
松本:立ち位置はゲットアップキッズとかブレイドがベースが真ん中だったから、「よし、ベースを真ん中にしよう」って、ただそれだけなんだよね。
立ち位置によって演奏に変化はありましたか?
松本:ライブハウスのブッキングに出てる時に、「ボーカルが真ん中じゃないと、お客さんに伝わらないんだよ。」って、お説教を受けたことがあって、まっつんを真ん中にしてみたりしたんだけど、「やりずれえ!」って思ったね。途中から、「音とかどうでもいいからベースが真ん中だ! 」っていう話になって、ベースを真ん中にした。
萩原:でも音的に不都合は感じたことないね。
Angry Nerdとneko! とdoes it floatのスプリットでは、Angry Nerdがneko!の曲をカバーをして、does it floatはAngry Nerdの曲をカバーしていて、neko!はdoes it floatのカバーをしていますが、お互いのバンドを1曲ずつカバーしているのはなぜですか?
松本:俺とフルヤくん(neko!)とミシナさん(Angry Nerd)で話してて、フルヤくんがお互いにカバーしたら面白いんじゃないかって提案してくれて、カバーをやることになった…はず。
Angry Nerdやneko!のメンバーとはいつ頃から仲良くなったんですか?
松本:Angry Nerdと仲良くなったのは、OUT OF STYLeの10周年企画で、早稲田のZONE-Bで一緒にやったのがきっかけかな。その日にNodevansのふみくんが気に入ってくれて、後日名古屋に呼んでくれたりもして。そこでも一緒にやって益々仲良くなった気がする。
萩原:てか、もはやいつからだったか覚えてないよね。(笑) Angry Nerdとは2週間連続で会ったりしてるし。(笑)
そうなんですね。話が変わるのですが、こないだ西荻FlatでRVIVRのライブを見たんです。あの会場って元はスタジオだったこともあって、ステージがないじゃないですか。そういったステージのない場所でライブをすることに違和感はありますか?
松本:スタジオライブの違和感はないよ。別にスタジオライブの方が好きっていうのもないけど。
以前、neko!にインタビューをした際、フルヤさんから、解散することが決まったとき、まず最初に肉まんに伝えた、という話を聞いたんです。その話を聞いてから、フルヤさんと松本さんは仲が良いんだな、という印象が私のなかでずっとあって…。
松本:そう。「決めた。もう解散だ。まあ、そうは言っても俺、結構へこんでる」みたいな電話がかかってきて。「よし、わかった。飲みに行こう!」って、そのまま飲みに行った。(フルヤは)解散は悲しいって言ってたな。
neko!のような身近なバンドが解散した際に、自身のバンドについて何か考えたことはありましたか?
松本: neko!が解散するって聞いて、自分たちと照らし合わせて考えることはなかったけど。やっぱりみんな仕事とか家族とかあってさ。あくまで生活を楽しくしてくれる一つの要素としてバンドがあると思ってやってるんだよね。生活のメインではないの。例えば、「嫁さんの誕生日だからこの日はライブ誘われたけど、家で嫁さんを祝ってあげたい。」って言うんだったらそっちの方が何倍も重要だと思う。誘ってくれた人には申し訳ないけどね。今後誰かがバンドをやめたいって言っても止めない。それで解散したとしても、やめたやつを責めることもない。俺ももしやめたくなる時がきたら、「やめたいからやめるわ」って言ってやめると思うし。そういう考えが4人で共有できてるから長く続いてるんだと思う。
この4人になってからやめたいって言った人はいないんですか?
萩原:そういえば、言ったことないね。モティが入ってから7年とか?
松本:前のベースがやめるってなった時は、ちょうど大学を卒業するタイミングだったのもあって、「今後もバンドやりたいと思う?」って話を3人でしたんだけど、考えてみたら、他に趣味ってないし…。
萩原:そうなんだよね。(笑)
そうなんですね。では、新曲の話を伺っていきたいと思います。今年はアルバムをリリースされる予定なんですよね。
松本:実は今年中にアルバムを出したいなと思ってたんだけど、それより前にイギリスから7インチでスプリットを出すことになって。
そうなんですか!
萩原:なのでたぶんアルバムは今年中には出ないです。来年かな。スプリットについては夏にレコーディングして、普通にいけば秋には出ます。
今年リリースされる予定のそのスプリットは以前の作品と違う部分はなにかありますか?
松本:今回録る予定の曲も松村節全開だから以前と変わらないかな。
松村:審査をくぐり抜けた曲だからね。(笑)
松本:その7インチのスプリットを作って、2015年はUKツアーなんてできたら最高だねぇなんて話もしてて。もし実現したらアルバムも一緒に持って行きたいね。
では、最後にこれからのdoes it floatについて一言いただきたいのですが、えっと…今回あまりしゃべっていなかった持増さんにお願いしてもいいですか…?
一同:(笑)
持増:えー、マイペースに頑張ってますので、みなさんと会えるのを楽しみにしてます。
一同:………いいねえ!!! かっこいいー!!! (笑)