5人組バンドA PAGE OF PUNK。結成から10年以上が経っている彼らは、これまで何度もメンバーチェンジを繰り返している。今回ドラムの門脇洵、APAGE OF PUNKのアイドル的存在となっていたぺいぺいが抜け、ドラムに平島祐三が加入した。しかし、メンバーチェンジを繰り返してもなお、彼らのライブはいつでもその場の空気を大きく変え、観客との一体感を生み出している。一体、そんなA PAGE OF PUNKの根本はどういったところにあるのだろうか。今回、A PAGE OF PUNKでベースボーカルを務める久保 勉にインタビューを行った。
(Interview by 北村奈都樹)
――今回声をかけさせていただいたきっかけが、音楽前夜社というイベントだったんです。A PAGE OF PUNK(以下A PAGE)のライブをみたときに、観客との一体感に驚きました。観客を巻き込むようなライブはどういったきっかけでできるようになったんですか?
まだできてないですよ。自分は元々演奏する側でなく聞く側だったんですよ。今でもその感覚なんですけど、俺はかちっと綺麗な演奏できてるバンドより何にも弾かないで暴れるバンドが好きだったんですよ。それを突き詰めていこうとしてるだけなんです。楽しませる要素と激しい要素が一体になっていて、短的なメッセージを込めて歌うってバンドが好き。それはいちばん最初から変わらないんですよ。昔に比べて上手くなったよねって言われたりするんですけど、それしかやってないんです。(笑)
――そういった気持ちが強いからこそ、巻き込めるようなライブができるんですね。
技術はうちチームは本当に低いんです。弾くのは若いバンドの方がど上手いですよ。(笑)
――このバンドはキャラが濃いメンバーが集まっているような印象なのですが、ぶつかったりしますか?
A PAGEは、「チーム俺」なんです。曲に関してぶつかることは山ほどある。でも最終的に決めるのは僕です。メンバーが、「でもこっちの方がいい」って言うことはありますが、決めるのは僕です。
――そうなんですね。みなさん久保さんを完全に信頼しているんですね。
メンバー任せの面もありますし。俺はベースしか作らないから。今、ユウゾウ(平島祐三)はドラムがそれ程できないからいろんなことを言うけど、他の分野に関しては口ださない。「だめ」しか言わない。(笑) でもそれも低い水準だから、みんな悩んだりはしないですね。(笑)
――みなさん意志は強くても、久保さんに任せるという面ではみなさん同じ意見なんですね。
コンセプトありき。そこにズレてるのはアウトなんです。それだけなんです。
――それはメンバーを新しく決めることに関してもいちばん重要になってくるんですか?
そうですね。今の自分のメンバーが最強だって思うのは、それに賛同してくれる仲間だってところもなんですよ。曲作りに関しても意見はしてくれるんですけど、俺が最後にこれだって決めたら、賛同してくれます。それは抜けたカド(門脇洵)もずっとそうだったと思います。
――今回、カドさんが脱退して、ドラム未経験者のユウゾウさんがドラムとして加入と思うんですけど、ユウゾウさんをメンバーに入れることにしたのはなぜですか?
「俺にやらせてくれないか」って気持ちが強かった。楽器もやったことなくて、バンドも高校生のときにボーカルやってたぐらいで。(笑) でも、それでもやりたいって言ってくれて。マンガショックって若手バンドにひらっちってやつがいて、そいつとチアキ(A PAGE vo.)が仲良くて、ユウゾウはそいつの兄だったんですね。A PAGEのことがすごく好きでいてくれて。愛情があることは分っていた。でもうちのバンドってドラムが上手くて成り立つと僕が考えていて、素人は嫌だって言ったんだけど、チアキが「一回スタジオ入ってみよう」って言って。2回目か3回目のスタジオで腹くくりましたね。しかも、ユウゾウはものすごい練習したんですね。手もボロボロになっても、みんなにその姿を見せようとしない。「男」なんですよね。ゆうぞうの言動なんかもこっちが上がるんですよね。それでちょっとずつ感動していって。面白いことをやりたいと思ってやってれば、これでいいんじゃないかって思って。いろんなミスもするけど、それも今は楽しい。
――A PAGE は何度もメンバーチェンジを繰り返していますが、解散は考えたことはありましたか?
そういうのは一ミリも考えなかった。解散っていらないと思うんですよ。解散って聞くと、なんでって思っちゃうんですよ。別に置いとけばいいじゃないですか。モチベーションが上がらないとかってことがあっても休止にしちゃえばいいじゃないですか。A PAGEはメンバーが、がんがん変わるんですよ。同じメンバーでバンドを続けるってことにもあんまりこだわりがないんですよね。
――久保さんのブログでも、「A PAGE OF PUNKは続く。多分僕が死ぬまで、かな?」と書いてましたよね。
そういったところで、ラモーンズと一緒だと思ってるんです。あのバンドはある種の教科書なので。
――今のA PAGEの曲にも影響受けていますか?
受けてます、受けてます。ま、カウントですけど、ラモーンズは全部「1,2,3,4」で繋げてるんですよ。A PAGEの最初のコンセプトは「ラモーンズに勝つ」。倍言っていけばいいじゃんってことで、A PAGE は曲を繋げるときに「1、2、3、4、1,2,3,4」にしたんですよね。(笑)
――久保さんはパンク以外のジャンルもよく聴かれるんですよね。ブログでは卍LINEをよく聴いてると書かれていたのが印象的でした。
はい好きです。レゲエが大好きで。かたっぱしから聴いてます。卍LINEは1stアルバムがいちばん好きですね。9.11以降いろんなことが起こってるんですけど、そのことをちゃんと歌える人が好きで、レゲエはそうです。ARAREさんも要注意人物。面白いです。レゲエの人ってちゃんとそれが歌えるし、響かせようと意識してます。政治に対しての文句を政治と絡めないで言える。僕もそうでありたいです。だけど、そういう歌詞を書くと政治的だって言われちゃう。僕は政党をどこも応援したことないし、政党のことも知らない、政策のこともわからない。だけど、政治的って言われちゃう。いやいや、どこがやねん、と。(笑) ミサイルいらねっていうのがどこが政治的なのかと。(笑)「それをするのは嫌だ」って言うのは政治的ではなくて、感情ですよね。レゲエの人はそれがうまい。
――政治に対して誰もが様々な考え方を持っていると思うんですけど、周りにどう思われるか気にして自分の意見をいえない人が多いと思うんです。最近では、集団的自衛権のことがSNSでも騒がれていたじゃないですか。それで日本が変わるかもしれないっていう境目に立ったときに、政治に対しての意見をしっかり恥ずかしがらずに言わないといけない、と思い始めた方が多くなってきた印象がありました。でもレゲエやパンクというジャンルで活躍されている方々は、もっと早い段階からそう思っていたんですね。
そうそう。僕は小さいころから、政治に対しての「政治的でない」文句をちゃんと言えるバンド、パンクバンドが好きでした。パンクじゃないバンドはよう好かん。(笑) 周りにもでっかい音を出して、歪んだ音を出して、それをロックとかパンクだと言ってやってるのに、そうじゃないバンドがたくさんいて…。それはA PAGEを始めるきっかけにもなってるんですよ。
――そういった歌詞を書いたり、歌うっていうのは勇気がいることだなあと思うんですけど。
最初からそれしか歌う気しかないから、勇気なんて一ミリもないですよ。俺のチームは「パンクバンドでありたい」っていうのがコンセプトの一つ。だから、バンド名はA PAGE OF PUNKなんです。ピストルズ(セックス・ピストルズ)の「Anarchy In The U.K.」って歌は、混沌として、いろんなことが起こってるイギリスの状況は唾を吐くしかないんだ。っていう今の政治はクソダッテな歌ですよね。今の政治をひっくり返そうよっていう。だから、ちゃんとパンク好きでピストルズ好きだったら自然と歌詞もそうなると思います。自分らの問題点に目を向けるはずだと思うんです。ハイスタンダードもそうだと思います。でも、彼らの文化や出てきた背景を知らずに彼らを好きになるって人は、彼らを音楽家ととらえていて、彼らのサウンドが好きだっていう人が多いと思います。僕は違う。サウンド「も」好き。それより、彼らの文化が好きなんですよ。彼らの背景が好き。僕は自分のすきなバンドがそうだから、そういった歌詞が書くし、それに勇気なんていらないんですよ。音楽が好きなんてのは当たり前ですが、パンクじゃなくとも良い音楽はありますよね?パンクが凄いのは背景と文化の厚みだと思います。
――去年、一昨年イギリスでツアーをしていましたよね。何か刺激を受けたことはありましたか?
UKツアーは変わりましたね。日本よりも言葉に反応してくれる。ライブのMCで、「この曲は「Fuck America」って曲なんだよ。けど俺たちはアメリカの人たちが嫌いなんじゃないんだよ。アメリカで権力を持ってる人が嫌いなんだよ。」って言ったら、これまで腕組んでみてたやつが、曲が始まった瞬間にいきなりダイブしてきたろして。それって、日本では味わったことがなくて。「Fuck America」って言ったところで、そのことについて質問してくれる人ってすごく少ない。でもイギリスだと、うおーってなる。イギリスには去年、一昨年と2回ツアーに行ったんです。一昨年はすごく小さいパブでのツアーだったんだけど、去年は全部の会場がそれ以上の会場になってて。俺たちは日本だと中堅バンドだから、一番最初に見たときに驚く人が減ってきて、自信を失いかけてた。でもイギリスのお客さんは、自分たちのライブに驚いている。そういう顔を見れるっていう喜びを大幅に感じることができて、自分たちをまた信じることができたツアーでした。
――新しいアルバムを制作中とのことですが、A PAGEはアルバムをリリースしたばかりですよね。この短期間で新しいアルバムを制作しようと決めたのはなぜですか?
ユウゾウでアルバムを作りたかったから。ドラムがユウゾウになって、新しいアイディアが出るようになったんですよ。でもアルバムを作ることに躊躇しているんです。それは作品を新しく作るなら、前作を超えたい。それを超えるアイディアっていうのは、みんなで集めなくちゃならない。今は俺とチアキアイディアでなんとかしていかなくてはいけない。でもチアキはすっごい忙しいし。だから、躊躇しているところがありますね。
――どういった作品にしていきたいと思っていますか?
今まで通り。今考えてるのは、サウンド面で遊びができたらなと思ってます。今までが弱かったとは思ってないんですけど。これも言ってるだけで実現するかわかんないんですけど、でも思ってますね。
――それでは、そろそろインタビューを終わりにしようと思うのですが、これからバンド始める方に伝えていきたいことなどありますか?
A PAGEは「You Ought To Die」「Fuck America」「Fuckin’ System Fuckin’ Life」「No War No Cry」って4曲が初めの方に出来ました。この4曲のコンセプトは 始めたときからあるって事です。だから、もしA PAGEに興味があってパンクバンドを始めたいと思ってる人がいるならば、それを考えてもらいたいです。それは今だから言う感じです。もしかしたら、日本が変わってしまうかもしれないタイミングだから。あなたが考えて言うっていうのがデカいと思ってます。これまでは僕が僕の言いたい事を言えばいいと思ってたんです。共感なんて要らないって。けど、今はそれじゃだめですよね。ちゅーことで、よろしくお願いします。